EYストラテジー&コンサルティングへの転職を検討する際、離職率の実態は見逃せない判断材料です。
Big4コンサルティングファームとして急成長を続ける同社ですが、「激務で人が辞める」「離職率が高い」といった声も散見されます。
しかし実際には、部門や入社年次によって離職率には大きな差があり、一括りに語ることはできません。
本記事では、コンサル業界全体の離職率データを踏まえたうえで、EYストラテジー&コンサルティングの部門別の実態や主な退職理由、そして他Big4ファームとの比較を詳しく解説します。
転職後のミスマッチを防ぐために、データに基づいた客観的な情報をお届けします。
EYストラテジー&コンサルティングの離職率が注目される背景
Big4コンサルの中でも急成長を遂げるEYの現在地
EYストラテジー&コンサルティング(EYSC)は、2020年10月にEYアドバイザリー・アンド・コンサルティングとEYトランザクション・アドバイザリー・サービスが統合して誕生しました。この再編により、戦略立案からM&A支援、業務改革、テクノロジー導入まで一気通貫でサービスを提供できる体制が整い、Big4コンサルの中でも特に積極的な成長路線を歩んでいます。
EYグローバル全体の売上高は2023年度で約499億米ドルに達しており、前年度比で約9.3%の成長を記録しました。日本法人においても人員拡大のペースは著しく、統合前と比較してコンサルタント数は大幅に増加しています。2023年時点でEYSCの従業員数は約4,000名規模に達しているとされ、毎年数百名規模の中途採用を継続しています。
このような急成長フェーズにある組織では、採用数が多い分だけ退職者数も目立ちやすくなります。仮に離職率が業界平均と同程度であっても、母数が大きいため「辞めた人の声」がインターネット上に蓄積されやすい構造があるのです。そのため、離職率を正しく理解するには、成長ステージを踏まえた文脈での分析が欠かせません。
コンサル業界全体の離職率はどの程度なのか
EYストラテジー&コンサルティングの離職率を評価するうえで、まずコンサル業界全体の水準を把握しておく必要があります。厚生労働省が毎年公表している「雇用動向調査」によれば、2023年の全産業平均の離職率は15.4%です。一方、コンサルティング業が含まれる「学術研究,専門・技術サービス業」の離職率は11.0%となっており、全産業平均を下回る水準にあります。
ただし、この統計はシンクタンクや設計事務所なども含む広い業種区分であり、経営コンサルティング業界単体の離職率とは異なります。業界専門メディアや転職エージェントの調査によれば、コンサルティングファームの年間離職率は概ね15%〜20%程度と推定されており、全産業平均よりもやや高い水準です。特にBig4のような大手ファームでは、プロジェクトの区切りが転職タイミングになりやすく、人材の流動性が構造的に高くなる傾向があります。
「離職率が高い=ブラック」とは限らない理由
コンサル業界の離職率が相対的に高いと聞くと、「厳しい労働環境に耐えかねて辞める人が多いのでは」と感じるかもしれません。しかし、コンサルティング業界における離職の中身を見ると、ネガティブな理由ばかりではないことが分かります。
まず、コンサル業界にはいわゆる「卒業文化(アルムナイ文化)」が根付いています。これは、一定期間ファームで経験を積んだ後に事業会社や他ファーム、あるいは起業へとキャリアを進めることがごく自然なキャリアパスとして受け入れられている文化です。EYストラテジー&コンサルティングもアルムナイネットワークを公式に運営しており、退職後も関係を維持する仕組みが整っています。
次に、コンサルタントとしての経験は転職市場で高く評価されるため、より良い条件や新たな挑戦を求めてポジティブに転職するケースが多い点も見逃せません。実際、口コミサイトの退職理由を分析すると、「キャリアアップのため」「やりたいことが明確になった」「起業するため」といった前向きな理由が一定割合を占めています。
そして、コンサルファームではアップ・オア・アウトの文化が以前よりは薄れつつあるものの、高い成果を求められる環境自体は変わりません。この環境が合わないと感じた人が早期に別の道を選ぶことも、結果として離職率を押し上げる要因になっています。つまり、離職率の数字だけを見て「ブラック企業である」と判断するのは早計であり、退職理由の質を見極めることが重要です。
EYストラテジー&コンサルティングの離職率を部門別・年次別に分析
部門別の離職率傾向(コンサル・ストラテジー・トランザクション)
EYストラテジー&コンサルティングは、大きく分けてコンサルティング部門、ストラテジー部門、トランザクション部門の3つの機能を持っています。それぞれの業務特性が異なるため、離職率の傾向にも違いが見られます。
コンサルティング部門は、業務改革やテクノロジー導入などのプロジェクトを担当し、EYSCの中でも最も人員規模が大きい部門です。プロジェクトの繁閑差が大きく、長時間労働になりやすい時期があるため、口コミベースではワークライフバランスへの不満が比較的多く見られます。そのため、離職率はやや高めの傾向にあると推定されます。
ストラテジー部門(旧パルテノン)は、戦略コンサルティングに特化しており、少数精鋭のチーム体制で運営されています。高い専門性と希少なプロジェクト経験が得られるため、定着率は相対的に高い傾向があります。ただし、戦略コンサル特有の高いパフォーマンス要求があるため、フィットしない場合は早期離職につながるケースもあります。
トランザクション部門は、M&Aアドバイザリーやデューデリジェンスなどを担当しています。案件の波がありつつも、専門性の高いスキルが身につくことから、一定期間経験を積んだ後にPEファンドや投資銀行、事業会社のM&A部門へ転職するパターンが多い点が特徴です。
| 部門 | 主な業務領域 | 離職率の傾向 | 主な離職理由 |
|---|---|---|---|
| コンサルティング | 業務改革・テクノロジー導入 | やや高め | 業務量の多さ、WLBへの不満 |
| ストラテジー(パルテノン) | 戦略コンサルティング | 相対的に低め | パフォーマンス要求とのミスマッチ |
| トランザクション | M&Aアドバイザリー・DD | 中程度 | 専門スキルを活かしたキャリアアップ |
入社年次別に見る3年以内離職の実態
入社年次別の離職傾向を見ると、特に中途入社者における入社後1〜2年目の離職率の高さが注目されます。中途入社者の場合、入社前の期待と実際の業務内容やカルチャーにギャップを感じやすく、このミスマッチが早期離職の大きな要因となっています。特にコンサル未経験で入社した方がプロジェクトのスピード感やアウトプットの質に適応しきれず、入社1年以内に退職を検討するケースが口コミでも複数確認できます。
入社2年目になると、一定のプロジェクト経験を積んだうえで「この環境で長期的にキャリアを築けるか」を冷静に判断するフェーズに入ります。ここで自分の志向性と部門の方向性が合わないと感じた場合、転職活動を開始する方が増えます。3年目以降になると、シニアコンサルタントへの昇格が視野に入り、マネジメント業務の比重が増えてきます。プレイヤーとしての仕事を続けたい方や、より専門性の高い環境を求める方がこのタイミングで転職する傾向があります。
一方、新卒入社者は研修制度やメンターシップの恩恵を受けやすく、組織文化への適応もスムーズなため、中途入社者と比較すると3年以内離職率は低い傾向にあります。厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」によると、大卒者の3年以内離職率は全産業で約34.9%(2021年3月卒)ですが、大手コンサルファームの新卒離職率はこれを下回る水準と推定されています。
直近の離職率は改善傾向にあるのか
近年、EYストラテジー&コンサルティングでは働き方改革に関する取り組みが進んでおり、離職率は改善傾向にあると考えられます。口コミサイトのデータを総合すると、月平均の残業時間は約40〜45時間程度で推移しており、コンサル業界の中では比較的管理された水準です。また、有給消化率は約60〜65%程度とされ、以前と比べて取得しやすい環境が整いつつあります。
具体的な施策としては、プロジェクトのアサインメント管理の高度化により、特定の個人に業務が集中しないような仕組みづくりが進んでいます。さらに、リモートワークの定着やフレックスタイム制の活用も、ワークライフバランスの改善に寄与しています。EYグローバルが掲げる「NextWave」戦略の中でも、人材のリテンション(定着)は重要なテーマとして位置づけられており、日本法人においても離職率の低減に向けた投資が継続されています。
ただし、プロジェクトの繁忙期には依然として長時間労働が発生するケースもあり、すべてのチームで均一に改善が進んでいるわけではありません。部門やチームリーダーのマネジメントスタイルによっても実態は異なるため、転職検討時には志望する部門の具体的な働き方について情報収集することが大切です。
EYストラテジー&コンサルティングの主な退職理由5選
給与水準と業務量のミスマッチ
EYストラテジー&コンサルティングにおける退職理由として最も多く挙げられるのが、給与水準と業務量のバランスに対する不満です。Big4コンサルの給与水準は一般的な事業会社と比較すれば高い水準にありますが、業務の負荷やプレッシャーを考慮すると「見合わない」と感じるケースがあります。
具体的には、EYSCのスタッフクラス(アナリスト〜コンサルタント)の年収は概ね500万〜800万円程度、シニアコンサルタントで800万〜1,100万円程度、マネージャーで1,100万〜1,400万円程度と推定されます。この水準はBig4の中ではデロイトやPwCと同等か、やや下回るポジションにあるとされています。特にスタッフからシニアクラスにかけては、激務が続く一方で昇給幅が限定的だと感じる方が多く、報酬面での不満が退職の引き金になりやすい構造があります。
また、コンサルティング部門では複数のプロジェクトを同時に担当することもあり、稼働率が高止まりする時期が続くと心身の疲労が蓄積しやすくなります。こうした状況で「もう少し余裕のある環境で同等以上の年収を得られるなら」と考え、事業会社やワークライフバランスを重視するファームへの転職を検討する方が出てくるのです。
部署間異動・スキル幅の制約
2つ目の退職理由として目立つのが、部署間異動の難しさやスキルの幅に対する制約感です。EYストラテジー&コンサルティングでは、各部門・チームの機能が比較的明確に分かれており、一度配属されると別の領域の案件に携わる機会が限られるケースがあります。
たとえば、テクノロジー系のプロジェクトに配属された方が「戦略案件も経験してみたい」と希望しても、部門を跨いだ異動は容易ではありません。社内公募制度やモビリティプログラムは存在するものの、現在のプロジェクトの状況やチームの人員構成によって実現可能性が左右されるのが実態です。
こうした制約を感じたコンサルタントの中には、より幅広い経験を積める環境を求めて他ファームや事業会社への転職を選択する方がいます。特に「ゼネラリストとして成長したい」という志向が強い方にとっては、専門特化型のアサインメントが続くことにフラストレーションを感じやすい傾向があります。
ポジティブ退職:キャリアアップ・独立志向
3つ目の理由は、前向きなキャリアチェンジを目的とした退職です。先述の通り、コンサル業界には卒業文化があり、EYストラテジー&コンサルティングも例外ではありません。むしろ、EYでの経験がキャリアの土台として高く評価されるからこそ、次のステージに進む方が多いともいえます。
具体的な転職先としては、大手事業会社の経営企画部門や戦略部門への転職が多く見られます。加えて、PEファンドやベンチャーキャピタルへの転身、スタートアップのCxOポジションへの就任なども増加傾向にあります。独立してフリーランスのコンサルタントとして活動するケースや、自ら起業する方も一定数います。
こうしたポジティブ退職が全退職者の中で占める割合は、口コミ分析からおおよそ3〜4割程度と推定されます。EYで培った問題解決能力やプロジェクトマネジメントスキル、そしてグローバルネットワークへのアクセスが、次のキャリアにおける大きな武器になっているのです。
カルチャーフィット・期待値とのギャップ
4つ目の退職理由は、組織文化や業務内容に対する期待値と現実のギャップです。このギャップは大きく3つのパターンに分けることができます。
1つ目は「事前リサーチ不足」によるギャップです。転職前にコンサル業界の働き方やプロジェクトの実態を十分に調べないまま入社し、想像以上の業務量や求められるアウトプットのレベルに圧倒されてしまうケースです。特にコンサル未経験の中途入社者に多く見られます。
2つ目は「部門特性の理解不足」です。EYストラテジー&コンサルティングという企業名で一括りにして入社したものの、配属された部門の業務内容が想定と異なっていたというケースです。たとえば「戦略コンサルがやりたかったのに、システム導入のPMO業務がメインだった」といった声が口コミで散見されます。
3つ目は「自己適性の見誤り」です。コンサルタントに求められるスキルセットや思考スタイルが自分に合っていなかったと入社後に気づくパターンです。論理的思考力だけでなく、クライアントとの折衝力やプレッシャー下でのパフォーマンス維持能力など、多面的な適性が問われる環境であるため、一部の能力には長けていても総合的にフィットしないと感じる方もいます。
こうしたギャップを最小限に抑えるためには、転職前の段階でOB・OG訪問やエージェントを通じた情報収集を徹底し、配属予定部門の業務内容やカルチャーについて具体的に確認することが重要です。
他Big4ファームとの離職率・働き方比較
デロイト・PwC・KPMGとの離職率・残業時間比較
EYストラテジー&コンサルティングの離職率や働き方を正しく評価するためには、同じBig4に属するデロイト トーマツ コンサルティング、PwCコンサルティング、KPMGコンサルティングとの比較が有効です。以下の表は、口コミサイトの情報を総合して推定した各社の働き方に関する指標です。
| ファーム名 | 推定年間離職率 | 月平均残業時間(目安) | 有給消化率(目安) | 退職理由の傾向 |
|---|---|---|---|---|
| EYストラテジー&コンサルティング | 約15〜20% | 約40〜45時間 | 約60〜65% | キャリアアップ、給与不満 |
| デロイト トーマツ コンサルティング | 約15〜20% | 約45〜50時間 | 約55〜60% | 長時間労働、キャリアアップ |
| PwCコンサルティング | 約15〜20% | 約40〜50時間 | 約55〜65% | 組織拡大に伴う混乱、キャリアアップ |
| KPMGコンサルティング | 約15〜20% | 約35〜45時間 | 約60〜70% | 給与水準、成長機会の限定 |
※上記はOpenWork等の口コミサイトの情報を基にした推定値であり、各社の公式発表データではありません。
この比較から分かるのは、Big4各社の離職率はいずれも概ね15〜20%の範囲にあり、EYストラテジー&コンサルティングだけが突出して高いわけではないということです。残業時間についてはKPMGがやや少ない傾向にありますが、いずれのファームもプロジェクトの状況によって大きく変動します。EYは有給消化率がBig4の中では中程度の位置にあり、近年の働き方改革の効果が一定程度反映されていると見ることができます。
EY独自の組織風土と「人を大切にする文化」の実態
EYグローバルが掲げるパーパス「Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)」は、同社の組織文化を理解するうえで欠かせないキーワードです。このパーパスは単なるスローガンではなく、日々の業務やマネジメントにおいても一定の影響力を持っています。
具体的には、EYストラテジー&コンサルティングではダイバーシティ&インクルージョンの推進に力を入れており、女性管理職比率の向上やLGBTQ+への理解促進、障がい者雇用の拡大などに積極的に取り組んでいます。また、メンタルヘルスサポートやカウンセリングサービスの提供、ウェルビーイングプログラムの導入など、社員の心身の健康を支える制度も充実しています。
口コミサイトでも「人が温かい」「チームワークを重視する文化がある」「パワハラ的な上司は少ない」といった声が比較的多く、他のBig4ファームと比較して「人を大切にするカルチャー」が浸透していると評価されることが多い点は、EYの特徴といえるでしょう。ただし、これもチームやプロジェクトによって温度差があることは認識しておく必要があります。すべての部門で理想的な環境が保証されているわけではないため、面接時やオファー面談の段階で、配属予定チームの雰囲気やマネジメントスタイルについて具体的に質問することをおすすめします。
離職後のキャリアパスから見るEYの評価
EYストラテジー&コンサルティングの価値は、在籍中だけでなく退職後のキャリアパスにも表れています。EY出身者(アルムナイ)の転職先は多岐にわたり、大手事業会社の経営企画・事業開発ポジション、外資系企業の管理職、他コンサルファームのマネージャー以上のポジション、PEファンドや投資銀行、さらにはスタートアップの経営幹部など、幅広い選択肢を持っている方が多いのが特徴です。
特にトランザクション部門の出身者はM&A関連の専門性が評価され、金融業界やPEファンドへの転職において競争力を持っています。ストラテジー部門の出身者は戦略立案能力が買われ、事業会社の経営層に近いポジションに就くケースが目立ちます。コンサルティング部門の出身者はプロジェクトマネジメント能力やITスキルが幅広い業界で活用できるため、転職先の選択肢が最も広い傾向にあります。
EYは公式にアルムナイネットワークを運営しており、退職後もイベントやコミュニティを通じて元同僚とのつながりを維持することが可能です。このネットワークがビジネス上の新たな機会を生むこともあり、「EYを卒業すること自体がキャリアの資産になる」という評価は転職市場において広く認知されています。
まとめ:EYストラテジー&コンサルティングの離職率をどう捉えるべきか
本記事では、EYストラテジー&コンサルティングの離職率について、業界全体の水準との比較、部門別・年次別の傾向分析、主な退職理由、そして他Big4ファームとの比較という複数の観点から解説しました。
改めてポイントを整理すると、EYストラテジー&コンサルティングの推定離職率は年間15〜20%程度であり、これはBig4コンサルの中で突出した数字では

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